富嶽三十六景 駿州片倉茶園ノ不二  葛飾北斎
富嶽三十六景 駿州片倉茶園ノ不二   葛飾北斎
 
商品詳細
『富嶽三十六景 駿州片倉茶園ノ不二』 葛飾北斎
"Thirty-six Views of Mt. Fuji/The Tea plantation of Katakura in Suruga Province" Hokusai Katsushika
松尾芭蕉には「駿河路や はなたちばなも 茶のにほひ」の句がある。
駿州(静岡)は、駿河路は橘の花すら茶の香りがする、と詠まれたほどに江戸時代からお茶の生産で有名であった。
「慶安御触書」(慶安2年、1649)の頃はまだ、農民に対して酒や茶などの贅沢を禁じ、
「みめかたちよき女房なりとも夫のことをおろかに存、大茶をのみ物まいり遊山すきする女房を離別すべし」と言う一条があったほどである。
いくら美人の女房でも亭主をほったらかしにして、お茶したり、遊び惚けたりする女房は離婚してしまえ、という訳である。
現代にも通用する、というご仁もいるかも知れない。
しかし北斎のこの頃になると、もはやお茶は庶民の嗜好物であり、消費と生産が拡大していた。
駿河の茶の生産がそれほど盛んであったのに、この図の「片倉茶園」とはどこなのか?長い間不明であった。
元教員のある女性が小学生の頃から持ち続けた「北斎の片倉茶園とは、私が育った地域にある片倉のことではないか」、という疑問を契機に、数年前にこれが解明される事になった。
詳細は省くが、中央大学文学部の西川広平准教授などの研究者たちが山梨県立博物館開催の特別展のために編集発行した図録に、『江戸時代、麦・粟・大豆・小豆・芋・茶を生産していた愛鷹山麓の中野村の小字に東片倉・西片倉があり、同所から望んだ富士と考えられる』とあった。 彼女は自分が長年抱えていた疑問が正しかったと確信したらしい。
だが、私にはこの事について小さな疑問がある。
文久元年(1861)に成立した「駿河志料. 第4編」の中野村の項(105p)には、中野村は「吉原へ凡そ一里廿町」と東海道吉原宿から約6km離れていることが記され、領地は「御皆畠」とあって水田がなかったことがわかる。
そして肝心の片倉の地名が「小地名」の項に「三倉、片倉」と記されている。
私の疑問というのは、この比較的よく知られた史料である「駿河志料」には「片倉」の小地名が明記されているのに、何故これが『駿州片倉茶園ノ不二』の片倉に推定されなかったのだろうか、ということである。
しかも、中野村に寺領を有していた法蔵寺のホームページには「高台から見られる景観は、葛飾北斎の浮世絵「冨嶽三十六景」の一つ「駿州片倉茶園ノ不二」の描写地との伝承があります」とある。
伝承の根拠はわからないが、古くからの伝承なら中野村片倉説を補強するのに十分である。
さて、今川義元の頃から六所家が住職をしていた富士山東泉院は、五社浅間社の別当として中野村の社領の経営にあたってきた。
しかし東泉院は明治維新の廃仏毀釈で廃寺となり六所家は還俗したが、六所家に伝わる古文書『富士山大縁起』にはかぐや姫の原型となる伝説が記されているらしい。 当然、祭神木花之佐久夜毘売(このはなのさくやびめ)がモデルであろう。
図をみると、茶の生産が組織だった分業制で行われている。まさにマニュファクチュア(工場制手工業)そのものである。
優れた組織力、経営力を有する領主、まさしく名家六所家の手工業的お茶生産の風景ではなかろうか。
六所家には膨大な古文書が残されているらしいが、その史料の中に茶の生産に関する記述がありはしないだろうか。
いかにも女たちの姦しいおしゃべりが聞こえてきそうな作業風景には、大名という封建領主の過酷な収奪から解放されている社領の農民たちの幸せが感じられる。
最後に、北斎はどうして東海道からそれた無名の中野村に題材をとったのであろうか。
北斎がこの図を描いた場所であるという伝承がある法蔵寺は日蓮宗の寺で、総本山身延山久遠寺の末寺である。
北斎は富嶽三十六景『身延川裏富士』で身延山久遠寺の参拝客の往来を描いているが、熱心な日蓮宗信者である北斎も参拝したであろう。
身延川が富士川に合流する地点の20km余り上流が鰍沢で、北斎は富嶽三十六景『甲州石班澤』も描いている。
天明2年(1782)に成立した『甲斐名勝志』には「鰍沢より駿河国岩淵(現在の富士市岩淵)まで凡そ18里で、船で急流の富士川を下ればその日のうちに着く」とある。
おそらく北斎は身延山久遠寺に詣でた後、富士川を船で下って岩淵まで出たのではないだろうか。岩淵から法蔵寺までは8km足らずである。
ついでにお参りした法蔵寺の裏山から見た片倉茶園の作業風景をみて、この図がひらめいたのではあるまいか。
いわゆる裏富士と呼称される追加出版の10図の中に『駿州片倉茶園ノ不二』と『身延川裏富士』の両図が含まれるから、以上のような推測をしてもよいのではないか。
 
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富嶽三十六景 駿州片倉茶園ノ不二  葛飾北斎
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