青楼六家選 松葉屋 粧ひ  喜多川歌麿
青楼六家選  松葉屋 粧ひ  喜多川歌麿
 
商品詳細
『青楼六家選 松葉屋 粧ひ』    喜多川歌麿
"Yosooi of the Matsubaya, from the series Selections from Six Houses of the Yoshiwara"     Utamaro Kitagawa
今回は「松葉屋」のトップ花魁「粧ひ(よそおひ)」である。
いきなり余談をする。
昭和61年に『吉原はこんな所でございました-廓の女たちの昭和史』という本が出版された。
著者は福田利子氏という方で、新吉原江戸町二丁目で平成10年まで営業を続けた引手茶屋「松葉屋」(戦後は実質、料亭)の女将である。
昭和の記憶とは言え、やや生々しい「吉原の証言」であり貴重な資料と言える。
この引手茶屋「松葉屋」は妓楼ではないので、江戸時代の松葉屋(新吉原には松葉屋の屋号は2店あった)とは無関係なのか、何かの因縁で屋号だけを引き継いだのか、
あるいは、妓楼「松葉屋」が引手茶屋に転業したのか、全く手がかりがない。
しかし、妓楼「松葉屋」は新吉原では扇屋や丁子屋などと並んで名門の屋号である。
さて、新吉原の最上級の花魁は『吉原細見』をみると「よびだし」の肩書がつけられている。
この肩書の花魁は客がいきなり妓楼に上がり込んでも相手にされない。
まず引手茶屋を通して「よびだし」をしなければならない。客はこの引手茶屋で飲食をしながら花魁を待つ。
呼び出された花魁は禿(かむろ)や振袖新造(禿から成りあがった新米の遊女)などを引き連れ引手茶屋へ向かい、指名をしてくれた客を連れて自分の妓楼にもどる。
この往き還りを花魁道中というようになった。
『松葉屋 粧ひ』の名は、寛政7年の吉原細見で松葉屋(松葉屋半蔵)に見られる。この松葉屋の「よびだし」は「粧ひ」ひとりだけである。
しかし、寛政4年の松葉屋には名がみられないから、寛政5~7年の間に松葉屋のトップ花魁(しかもたったひとりの「よびだし」)にのし上がったのである。
「紀要論文」 実践女子大学文芸資料研究所 年報 第36号に『新吉原松葉屋抱「粧ひ」-教養も智力も人間力もある女性』という論文が所収されている。
著者は日比谷孟俊(ひびやたけとし)という工学博士で、慶応義塾大学大学院教授を退職後、実践女子大学文学博士として新吉原に関する論文などを発表している。
彼の研究によると『松葉屋 粧ひ』歴代の着物紋は、
銀杏 (文化3年春1806、14歳で突き出し~文政2年1819)、
菊  (文政3年1820~文政5年1822)、
三つ柏(文政6年1823~文政9年1826)、
朝顔 (文政9年1826~文政12年1829)
となっている。
(※「つきだし」とは遊女としてデビューする行事。どこか残酷な響きのある言葉である。)
残念ながら、文化3年以前の「粧ひ」の着物紋については言及がない。
本図に描かれた「粧ひ」の着物紋は「四つ銀杏」であるから、文化3年春(1806)~文政2年(1819)に在籍の「粧ひ」のはずだ。
しかし、この年の「粧ひ」は数え年14歳で遊女になったばかり、しかも歌麿はこの年の9月に没しているのだ。
この揃物『青樓六家選』のモデルになったとは考えにくい。
しかし、歌麿が描いた「粧ひ」の着物紋は「四つ銀杏」なのだ。
一方、『青樓六家選』は歌麿の晩年(享和期)の作品という事になっている。
この頃の年号は寛政-享和-文化-文政-天保と続くのだが、寛政7年及び享和3年の吉原細見に見られる「粧ひ」は、文化3年の銀杏紋の「粧ひ」とは別人である。
着物紋は花魁のIDとも言えるので、名跡は襲名しても着物紋を引き継ぐことは考えられない。
だから寛政及び享和期の「粧ひ」の着物紋は銀杏ではないと考えてよい。
話がややこしくなってしまった。
要するに、
『青樓六家選』の成立が享和期なら、「粧ひ」の着物紋は銀杏ではないはずであり、
描かれた「粧ひ」の着物紋が銀杏なので『青樓六家選』の成立は、文化3年9月に歌麿が亡くなる数か月前という事になる。
歌麿が描いた着物紋の銀杏の矛盾を研究者のどなたかが解明してほしいものだ。
さて、前出の論文によれば、銀杏紋の「粧ひ」は幼いころから楼主が手塩にかけて育て上げた花魁のようで、書、茶、和歌、香などの諸芸に秀で、酒井抱一などとも交流があったらしい。
本図をよく見ると、なんとなく若々しい雰囲気があって、歌麿は文化3年に遊女として「つきださ」れた「粧ひ」を描いたのではないかとも思える。
 
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青楼六家選 松葉屋 粧ひ  喜多川歌麿
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